こんにちは。今回は、インターネット発のカルチャーが好きな方なら一度は耳にしたことがあるかもしれない「SCP財団」が映画化されるという、非常に興味深いニュースについてお話ししたいと思います。
SCP財団とは何か?
「SCP財団」と聞いても、実在する組織や企業だと思う方は少ないと思いますが、これはインターネット上の匿名掲示板(アメリカの4chanなど)から自然発生的に生まれた、架空の秘密組織の名称です。
「自然の法則に反する超常的な物品・存在・現象(通称:SCPオブジェクト)を捕獲・収容し、人類の目から隠すこと」を目的とした架空の財団という共通の設定だけが用意されており、その設定に乗っ取って世界中のネットユーザーたちが「こんな恐ろしい怪物がいたら」「こんな不思議なアイテムがあったら」と、まるで本物の報告書のようなフォーマットで次々と創作を投稿し合うコミュニティです。
日本でもYouTubeの「ゆっくり実況」などを通じて解説動画がたくさん作られており、僕もそれでいくつか面白い設定のSCPを知りました。「僕が好きそうな、少し不気味でミステリアスなSF・ホラーの世界観」と言えば、なんとなく雰囲気が伝わるかもしれません。
「集合知」が作り上げるインターネットならではの作品
このSCP財団の最も面白いところは、特定の企業が権利をガチガチに管理して運営しているわけではなく、明確な一人の作者(原作者)が存在しないという点です。
過去の日本の事例で言えば、「電車男」や「きさらぎ駅」などに近いかもしれません。誰かが最初のアイデアを書き込み、それに触発された多くの名もなきユーザーたちが設定を付け足し、世界観を広げ、最終的に一つの巨大な「集合知」としてのエンターテインメントが組み上がっていく。これこそが、インターネットという媒体だからこそ生まれ得た、極めて現代的で特殊な創作の形です。
狙って作れない「集合知」の映像化への期待
企業が最初から「こういう設定でみんなに書き込ませてバズらせよう」と狙って仕掛けても、こういう熱狂的なコミュニティは絶対に生まれません。ユーザーたちの純粋な遊び心と熱量が自然発生的に積み重なった結果だからこそ、これほどまでに奥深く魅力的な世界観に育ったのだと思います。
それが20年近い歴史を経て、ハリウッドの映画スタジオ(今回は奇抜で質の高いホラー作品を多数生み出しているA24)によって映画化されるというのは、インターネットの歴史から見ても非常にワクワクする出来事です。
トップダウンで作られる既存の商業エンターテインメントとは全く異なるアプローチで生まれたこの作品が、映画というフォーマットでどう表現されるのか。公開を楽しみに待ちたいと思います。